ピルセン市民醸造所(チェコのビール醸造所)

もう1ヶ月近く前になるが、チェコのピルセンにある市民醸造所を見学してきた。現在世界中で飲まれている「ピルスナー」と呼ばれるタイプのビールをはじめて造った醸造所である。ここのビールの主力は「ピルスナー・ウルケル」で、日本も含めて世界中に輸出されている。ピルセン市は西部ボヘミア地方の街。プラハからなら鉄道で2時間ほど(ウィーンから行ったのでプラハは通らなかったが)。

工場は旧市街近くにある。見学はツアー形式になっていて、現在の最新鋭の工場の瓶詰め工程と、以前使っていた現在は稼働していない古い工場の両方を見せてくれる。現在の瓶詰め工程は最新鋭のビール工場そのものであり、日本でもおなじみのものだ。ここで見るべきはやはり古い工場の方である。特に印象的なのは麦汁を作ったりホップを加えたりするためのタンクと、発酵のために寝かせておく貯蔵用トンネル。工場敷地内の地下に縦横無尽に張り巡らせたトンネルで木樽でかつては発酵させていたそうで、トンネル内の温度を保つために天然氷を落とし込んでいた穴なども見ることができる。さらに、見学者は、酵母を濾過する前の「ピルスナー・ウルケル」が飲めるのだ(これは旨い)。

また、資料庫には、19世紀当時ここはオーストリア帝国の一部だったから、皇帝フランツ=ヨーゼフらが工場を訪れた記録などを見ることができて面白い。映像で19世紀から20世紀初頭の醸造所の様子を見ることもできる。

チェコは1人1年あたりビール消費量が150リットルと世界一になる「ビール大国」だ。街の中のレストランやバーでビールを注文しても0.5lで25コルナ(130円)ほど。喉ごしがあまり無く、ボヘミア特産のホップで苦みの利いた味の太い「ピルスナー・ウルケル」などのビールは、さわやかな味がする。(ビールは喉ごしと思っている人にはイマイチかもしれないが。)

チェコに行ったら、プラハやチェスキー・クルムロフで綺麗な街を眺めるだけでなく、こういう「チェコのビール文化の心臓」を覗いてくるのも面白いだろう。ここを見学すると、身の回りに当たり前にあるビールが、どういう過程を経て醸造されるかが分かるのはもちろんだが、ほとんど家庭毎に作られていたビールが、市民共同作業として共同で造られるようになっていった様子などもわかり、大変面白いのだ。

ピルセン市民醸造所の地下貯蔵トンネル。

ピルセン市民醸造所の地下貯蔵トンネル。

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