スカイ ヨーロッパ の経営状況の件、まとめてみた。

会社更生手続きに入っているスカイヨーロッパの経営状況について、ウィーンに拠点の1つを置いている航空会社なので、興味があったからあれこれ調べてみた。なお、会社更生手続きはスロバキアの法律に基づいて行われるが、スロバキアはEUに加盟しているため、資産保全などの手続き・法律上の取り扱いはEU加盟国全てにおいて適用されるそうだ。

なお、スカイヨーロッパは、格安運賃を売りにする「ローコスト・エアライン」の一つ。客1人あたりの売り上げは70ユーロ(1万円)程度である。

さて、新聞などから顛末を整理すると、以下のような状態らしい。

2008年末から2009年初頭にかけて、リース料の滞納を理由にGECAS (GE Commercial Aviation Services) からのリース機6機の返還を求められ、返還した。その後Air Slovakiaからリース機2機を(1機をWet-lease(クルーや保険なども含めたリース)、1機をDry-lease(機体のみのリース))し、合計10機を運用するようになった。合計14機の機材があったので、4機減ってほぼ2/3になったことになる。これによって、1月以降、プラハ発着便を中心に大幅なキャンセルなどが発生したらしい。(AFP通信、Wikipediaなど)

6月23日に、ブルガリアのソフィア空港と、パリのオルリー空港での、空港使用料の滞納により、それらの空港に駐機中の機材が差し押さえられた。ソフィア空港にあった機材(MD80!)は同日に離陸を許可されたが、オルリー空港の機材(B737-700)は支払いが完了するまで離陸を認めないとして、空港を管理する Aéroports de Parisにより差し押さえられた(DerStandard)。 なお同日にはブカレストでもトラブルで駐機することになったようだ(Wirtschaftblatt)。

7月上旬には、パリにある機材はいったん戻される望みが出たようだが(DerStandard)、未だ差し押さえられたままとのこと(29日時点、DerStandard)。

同時期には10月で期限が切れる営業許可の延長に関する懸念が出ていたが(DerStandatd)、今日(7月31日)に、オランダのFOCUS Equity BVから16.5Mio Euro (1億6500万ユーロ)の資金調達ができる目処がついたことで、延長できる見通しになった(Die Presse, Der Standard, Wiener Zeitung)。

ひとまず資金面では目処がつき始めているが、果たして旅客の方はどうだろう?特に23日に機材が差し押さえられて以降、機材繰りができなくなり、連日のように大幅な遅延をしているのが実態のようだ。定時運航率を示すオンタイム・レコードは悲惨だ。各路線とも大幅な遅れを出していて(平均1時間近い)最大268分の遅れというのが出ている。

ウェブ上でのユーザーの評価もがくっと下がっている(www.airlinequality.comなど) 。今月初頭には、5時間の遅れなども報告されている (fodors.com)。また、SkyEurope: Europe’s worst low-cost airline?との記事も。航空会社として重要な、「顧客の信頼」をどんどん失っているようだ。

さて、何がこのような状況を導いたのだろうか?少なくとも1年ほど前の段階では、会社として黒字こそ出していなかったものの、こういった大きなトラブルにはなかったようだ。ウィーンの株式市場に上場してからの、長期的な株価の下落と、経済不況での乗客減少が大きく影響しているらしい。とはいえ、経済不況下でも比較的安定しているローコスト・エアラインもあるから、経営戦略に問題があるのでは、ということになる。

個人的な見解を書いておくと、拠点戦略上も余り上手いとは言えない戦略を採ったのではないだろうか?拠点となる空港は、現時点ではブラティスラバ、ウィーン、プラハであるが、このうちウィーンとブラティスラバの空港は50km程度しか離れていない。そこに2つの拠点を構えるのは、小規模な航空会社としてはどう考えても効率が悪い。また、ポーランドのクラカウや、ハンガリーのブダペストのように、数年のうちに拠点を撤退してしまったところも多い。こうした経費もかさんでいるだろう。

ルートの設定も余り上手とはいえないように思う。

競合という観点から見ると、ブラティスラバやウィーンを拠点とする路線の多くでは、陸上の交通機関やライアンエアー、FlyNikiと競合している路線が多い。特にイタリア方面(Bergamo, Pisa, Treviso)やイギリス方面(Luton, Manchesterなど)といったところでの、ライアンエアーとの競争は資金を消耗したであろう。また、昨年からは稼ぎどころのロンドン-ウィーン線にeasyJetが参入してきた(早くも1日2便になっている。この間乗ったが、LF(Load Factor, 搭乗率)は80?85%程度のようだった。)。さらに、自家用車と競合しうる近隣のクロアチア方面などの路線も多い。

ターゲットとする旅客層という観点からみても、スカイヨーロッパのそれは曖昧だ。明らかに労働力の移動(労働者の移住)をターゲットにした路線設定をしているわけでもない。ルーマニアやブルガリア、バルカン半島の諸都市からウィーンへの路線が多いのであれば、移住者を狙っていることも予想できるが、年間を通して運航されているのはブカレスト(ルーマニアの首都)とソフィア(ブルガリアの首都)のみ。

移住者をターゲットにすれば、帰省などで一定の安定した需要を見込めると考えられるが、休暇利用をターゲットにすると景気の影響をもろに受けるであろう。ライアンエアーやイージージェットの成功の一因は、東欧方面からイギリスや西欧への労働者移住系の路線と、イギリスからスペインの海岸などへのイギリスの中産階級の別荘(ある種の「移住」だ)保有需要喚起という、比較的安定した需要が見込めるところに飛ばしていることだと思うのだが、スカイヨーロッパの路線からはこういった戦略は読み取れない。移住者を主なターゲットにした戦略は、ポーランドに拠点を置くWizz!Airやルーマニアに拠点を置くBlue Air、トルコのSun Express、スペインのVuelingなどに見られる。

さて、今後どういう道をたどるのだろうか?さしあたっての資金供給はなんとかなりそうでも、肝心の顧客がSkyEuropeブランドから離れて行っているようだ。とすると、空港の利用枠などをそのままに、easyJetなど、どこかに買収されて、大幅な構造の転換を図って、ブランド名も新たに再出発、というのがよいのではないだろうか。おそらく、ねらいを定めている航空会社はすでにいくつかあるだろう。(なお、easyJetの名をあげたのは、すでにBoeing 737-700を20機保有している、という理由だけで、それ以上の意味はない。easyJetにとっては、ウィーンの拠点と、SkyEuropeが保有する4機のBoeing 737-700がくっついてくるなら、安い買い物になるんじゃないだろうか?ローコスト・エアラインにとっては、機種はなるべく統一されていた方がよい。)

どうやら、以下の写真のようなライアンエアーの挑発が現実になってきているようだ。

[…]

航空会社の倒産と再建と買収:マイ・エアーとスカイヨーロッパとオーストリア航空と。

厳しい競争環境にあり、さらに不景気にさらされて、倒産してしまった航空会社がいくつかある。提携関係にあった2社が似たような時期に営業停止(運航権の剥奪)と会社更生手続きの開始に入った、というのは珍しいかもしれない。

事実上の営業停止を食らったのは、イタリアのマイ・エアーという会社。イタリア北部を拠点にして、パリなど西欧と、ルーマニアなど東欧に運航していた会社だ。税の納付などが遅れたらしく(ソース1)、イタリアの航空当局から運航許可を一時的に停止させられたとのこと。これでヴェネチアの空港だけで発着回数の1割を失うらしい(ソース2)。どうやら、このまま会社は解散する方向のようだ。

一方、日本で言うところの会社更生手続き(管財人がいるらしいので)に入ったのがスカイ・ヨーロッパ(ソース3)。財務状態が悪化し、リース料の支払いが遅れたため、ゼネラル・エレクトリック系の航空機リース会社から機材の返還を迫られ、14機あった機材を10機に減らした。それでも改善せず、本社があるスロバキアの裁判所に会社更生手続きの開始を申請した模様。経営再建を前提としていて、運航や会社そのものはこれまで通り存続するそうだ。

さて、航空会社と言えば、今日、EUからドイツのルフトハンザによるオーストリア航空の買収にGOサインが出た(ソース4、ソース5)。ウィーンの空港のスロットのうち、ドイツ方面のスロットを他社にいくつか譲ることなどの条件は付いているらしい。”Austrian”のブランドネームと長距離路線は維持されるとのこと。この買収でチャンスを狙っているのは、元F1レーサーのニキ・ラウダが経営するフライ・ニキ。東欧方面への路線拡充を狙っているらしいが、当局からGoサインが出ないようだ(ソース1)。

とまあ、こんな具合で、航空会社はなかなか大変な時期に入ったようである。

夏のウィーンは退屈なウィーン

この季節ともなれば、ウィーンは観光客だらけになる。街の中心からちょっと外れたところにも、アメリカ人だろうか、ビーチサンダルを履いた女の子の集団が観光用の地図を眺めていたり、中国人らしき団体観光客が集団で歩いていたり、ドイツ風のドイツ語を話す人たちがカメラ片手に地下鉄に乗っていたりするものだ。

だが、同時にウィーンの住人もどこかへ行ってしまう。多くはアドリア海や地中海の海を目指してイタリアやクロアチアやギリシャへ休暇に出かけるらしい。こちらでは2週間程度の休暇を取ることはごく当たり前に誰もが行うことなので、時期を少しずつずらしながらみなが夏の休暇に出かけてしまう。(まあ自分も2週間日本にいたが、クロアチアの海岸で2週間のんびりするのとはわけがちがう。)それに、大学の中も学生もいなければ研究員も半分くらい休暇に出かけたりしていて、「からっぽ」だ。

ということで、この時期にウィーンにいてもなんだかどことなく街が空っぽなかんじがして、ちょっと退屈である。誰もいやしない。だからといって何週間も休暇に出かけているような余裕もない。ウィーン市内も、主な観光地は一通り見てしまったから改めて行こうという気にもならないし(そもそも来訪者がある度に行ったりしているのだ)、博物館が夜に開いているわけでもないし、天気のいい日に屋内の陽の当たらない美術館にいるのもなんだか嫌である。博物館や美術館は冬に限る。むろん、オペラやコンサートは夏の間はオフシーズン。「本場」であるウィーンでは音楽祭もない(”本場”であるから、あるわけがない)。

ひとまず、この状況は自分で適当にやり過ごすしかない。でもなんだか、日暮れが21時頃で十分明るい夜だというのに、家でパソコンに向かってこうした文章を書いているのも、なんだかちょっとやるせないものがある。なかなか困ったものだ。

Personenschade……

ドイツ語(オーストリア語?)で、Personenschadeというらしい。なんか響きが日本語と似ているような・・・これは人身事故のこと。

昨日のこと、人身事故で轢かれた死体を見てしまった。

ケルンテン州のSt. Veit an der Glanからウィーンへ戻る列車に乗ったら、「事故で最低90分遅れます」との案内放送。1時間ほどで発車したのだが、発車後10分ほどのところが事故現場で、警察車両などがいたからすぐ現場だと分かるのだけど、隣の線路に置かれた棺桶に入れられているのを見てしまった。場所が築堤の上だったから、一瞬で何が起ったか分かってしまう。グロテスクなのでこれ以上の描写はよそう。

何が動機なのかは不明なのだが、オーストリアでは自殺者が増えているらしく、経済危機とも無縁ではないらしい。日本でも自殺者は交通事故による死者の4倍近くに登るという。

この手の事件が起った時の、運転士の心理とはどのようなものなのだろう?運転士の方にはあまり目線が向かないものだ。社会心理学かなにかの研究対象として興味深いところではないだろうか?また、ずいぶん昔に都営地下鉄の運転士から聞いた話では「よく当たる運転士と全くあたらない運転士がいる」というものがあったが、果たしてそうなのだろうか。だとすれば、こうしたところの要因の解明も、このような不幸を減らすために貢献することになるのではないだろうか?

『日仏カップル事情 日本女性はなぜモテる? 』

『日仏カップル事情 日本女性はなぜモテる? 』(夏目 幸子 (著)、光文社新書、2005)というなかなか面白い本があった。社会学なんだけど、エッセイ風で楽に読める。

何が面白いかって、この本の「フランス」を「オーストリア」に、「パリ」を「ウィーン」に置き換えてもよく当てはまる気がするのね。日本のことが好きな男、といってもサブカルチャーなんだけど、そういう男とか、こちらの”強い”女性を扱えない男とか、逆に「外人と1度は付き合ってみたい」とあこがれている日本人の女性とか、なんだかいろいろ見たこと聞いたことあるようなないような。

本書に「日本人と結婚した人は、その人という個人と結婚したのであって、日本文化と結婚したのではない」という趣旨の記述が出てくる。なるほど、そうだよね。だけど、暗に結婚相手が日本文化を受け入れる、なんていう期待が国際結婚の中ではあるのかも。

ちなみに、こちらでこのブログに表示される広告を見ていたら、JapanCupidという日本人対象の(真面目な)出会い系サイトがちゃんとあるのね。ざっと見てみると、男性は白人系の人が、女性は日本人の登録が多いみたい。同じようなサイトで韓国系の相手探しサイトもあるらしいから、なんとも驚いちゃった。

(全くの余談だが、BGMにかけているMutiのチャイコフスキーの交響曲第5番、やけに速いなあ・・・・)

入国カードの書き方?

アクセス解析をたまーに見ていると、興味深いことに、「ドイツ 入国カード 書き方」とか「イタリア 入国カード 書き方」など、入国カードの書き方を探して検索してくる方が結構多い。多分「アメリカ 入国カード 書き方」とか検索すれば、いくらでも検索結果は出てくるんだろうけど、ドイツとかイタリアとかフランスとかオーストリアなどの入国カードの書き方を調べてもわからないであろう。理由は単純で、そもそも入国カードなんてものがないのだ。旅行の出発まえに準備は万端にしようというスタンスは大いにすばらしいと思うのだが、入国カードがそもそもない国の入国カードの書き方を案じても仕方ない、ということになる。

シェンゲン協定に加盟している国以下の国では、「入国カード」なるものはそもそもない。パスポートコントロール(入国審査)では、パスポートさえあれば十分である。

シェンゲン協定加盟国は、2009年8月時点で、

オランダ ベルギー ルクセンブルク フランス スペイン ポルトガル イタリア ギリシャ マルタ オーストリア スイス リヒテンシュタイン チェ コ スロバキア ポーランド ハンガリー スロベニア リトアニア ラトビア エストニア フィンランド スウェーデン ノルウェー アイスランド デン マーク ブルガリア ルーマニア およびこれに準ずるバチカン、モナコ、サンマリノの各国

パスポート以外の書類が必要になるのは、規定の滞在許可申請免除範囲の日数以上(日本国籍保持者の場合、原則6ヶ月の間に90日間を超える場合。ただし北欧5カ国やオーストリアのように多くの例外がある)滞在する場合で、この場合は滞在許可(査証ではない)を申請する。ドイツやオーストリアのように、現地に到着後に当該の州政府に申請する制度になっていることも多い。(詳しくは各国大使館領事部のウェブサイトを参照)

以上、これから検索してくる方のためになれば。

8月25日:記事を編集し、読みやすく再度レイアウトした。ついでに追記。

イギリスはシェンゲン協定に加盟していない。現在でも入国カードを書く必要がある。氏名・パスポート番号・滞在先などを書くだけの簡単なものだ。

また、シェンゲン協定に近隣するクロアチアなども入国カードはない。

余談だが、多分、世界で最もフクザツな入国カードの一つを準備している国は日本だろう。外国籍の人が日本に入国する時には、「入国カード」(外国人出入国記録用紙)を記入せねばならないが、驚くことに、所持金を書く欄まである。おまけに顔写真と全ての指の指紋を取られるんだから、入国するだけでも面倒な国だ。現物を見たことがない方も多いと思うが、法務省入国管理局がサンプルをウェブサイトで公開(PDF)している。

ビール腹とビール消費量に直接の因果なし?

一昨日のオーストリアの新聞”Der Standard”に”Bierbauch keine direkte Folge des Bierkonsums“という記事がでていた。もとになったのはEuropean Journal of Clinical Nutritionに掲載された論文(英文版要約にリンク)。約2万人の被験者を対象にドイツで行われた実験では、ビール消費が多いほど太る(ウエストまわりが大きくなる)傾向にあるが、いわゆる「ビール腹」との直接の因果は認められないとのこと。なかなか面白い結果だ。

とはいえ、飲み過ぎにはご用心。