オーストリアの貨物列車脱線転覆事故

18日未明になるが、オーストリア西部フォアアールベルク州のブラーツで、貨物列車が脱線転覆する事故があった(ソース1ソース2)。貨物列車はルーマニア西部のCurticiから、フランス・パリ郊外(オルリーの近く)のValentonまで向かうもので、新車の自動車を運搬中であったとのこと。ジーメンス製の機関車に、車運車が16両つながっていたそうだ。ちなみに、機関車の自重は84t, 列車全体で777tの自重で、全長は548mだそうだ。

事故があった路線は、オーストリア西部のインスブルックから、最も西部のブレゲンツ方面へ向かう路線で、アールベルク峠を越える区間だ。事故のあっ たブラーツは、峠の西側の麓にあたるブルーデンツから10km弱のところにある。何度か乗ったことがあるが、単線で長い坂が続く区間だ。

脱線の原因は、今のところ確定的ではないが、何らかの原因で1両目と2両目の間のブレーキ管がはずれるなどして、2両目以降の空気ブレーキが作用しなかったことで、下り坂で加速して、駅の入り口で脱線したようだ。通常は制限速度を60kmに設定している”Brazer Bogen”(ブラーツのカーブ)という場所に、時速125kmほどで突っ込んでしまったらしい。(速度超過の理由は異なるとみられるが、カーブでの速度超過かつ60km/h制限のところに120km/hほどで突っ込んでしまった、という意味で、脱線の仕方が福知山線事故と似ている。)列車は5km程ブレーキがきかないまま走ったとのことだ。

通常、空気ブレーキには何らかのフェイルセーフ機構が備わっていて、広く使われている「自動空気ブレーキ」であれば、空気が抜けるとブレーキがかかる。(貨物列車なので、この「自動空気ブレーキ」が貨車に装備されていたのではないかと私は推測している。)今回のような「ブレーキがかからない」という事態はあまり想定しにくいので、原因は本格的な調査を待たないといけない。とりあえずの可能性としては、2両目の貨車の自動空気ブレーキ装置が故障・破損して運転台の弁の操作に対して応答できなくなった結果、2両目と、それを介してつながる3両目以降のブレーキが動作しなくなった(ブレーキ管の圧縮空気が抜けなくなったためにブレーキがかからなくなった)、などが考えられるだろう。

なお、運転士は脱線前に機関車の機器室に逃げ込んだため、死者を出さなかったのは不幸中の幸いだ。また、近隣には住居があったが、直撃はしなかったために住民にも犠牲者は出なかったそうだ。積み荷が化学薬品などではなく自動車だったことも、被害額は大きいといえ、不幸中の幸いだろう。

蛇足だが、現場近くでは、1995年にも旅客列車の脱線事故が起きているらしい。(ソース3, ソース4

周囲には積み荷の自動車が散乱しており、線路も損傷したため、22日火曜日夕方まで列車の運行は再開されないそうだ。

なお、上記ソース1に写真が数枚掲載されているので、ご覧いただきたい。

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