カーシェアリング

日本ではなじみの薄い制度として、「カーシェアリング」というものがある。文字通り「車を」「シェアする」制度であり、仕組みはレンタカーと似ているが考え方がずいぶん違っている。

まずカーシェアリングに参加するには会員になる必要があり、年会費を払う。利用は、時間ごとの利用料と、距離に応じた利用料を払う、時間距離併用制である。利用したい時には事前に予約をするなどをする点は同じ。ただし、レンタカー屋のように係員がいるステーションは基本的になく、車は住宅地の駐車場の一角や、駅前などに止めてあり、そこでピックアップ大半である。本人認証は、ICチップを埋め込んだ会員カードで行う。

世界でも最大級の規模を誇るのはスイスのモビリティー社らしいが、オーストリアでは、自動車の販売やレンタカー事業を手がけるデンツェル社が、デンツェル・モビリティー社としてカーシェアリング事業を手がけているそうだ(モビリティー社と提携関係にあるそうな)。

ちょっと気になったので、年会費などを調べてみた。以下の数値は、全て上述のデンツェル・モビリティー社のケース。

まず年会費は、標準は60ユーロ、約8,000円。ただし、ウィーン市内交通の年間定期券所持者、OeAMTC(日本のJAFに相当)、学生などは、39ユーロ(約5,000円)に割り引かれる。さらに、オーストリア鉄道の会員カード(持っていると国鉄運賃が半額になる)所持者は29ユーロ(20ユーロ分のクーポン付き)、オーストリア鉄道年間パス(一年間オーストリア鉄道が乗り放題になる)所持者は無料(50ユーロ分のクーポン付き)である。

このように、たいして高くもない年会費であり、さらにはかなりの確率で割引を受けるチャンスがある。公共交通系の定期券などを持っていると割り引かれるところに、この制度のおもしろみがあって、持続可能な交通に向けたかなり強い施策が実施されていることの現れであろう。

次に時間・距離の利用料。エコノミークラスとなっている、三菱COLTなどの大きさの車の場合(7時から23時までの、個人使用の場合)1時間あたりの利用料は1.85ユーロである。さらに、1km走るごとに0.50ユーロが加算される。だから、たとえば2時間利用して、合計20km走ったとすれば、1.85 × 2 + 0.50×20 = 13.70ユーロ。一人だと、公共交通に比べて割高な感じがするが、3?4人で使う分には問題ないだろう。

レンタカーのように遠くに行くためではなくて、近所でちょこっとだけ車を使う、そんな用途のために設計された制度だから、ちょこっと使えば使った分だけ料金がかかる仕組みだ。また、週末には週末料金が設定されており、金曜の昼12時から月曜の朝8時まで借りると、75ユーロ(約1万円)に、1kmあたり0.21ユーロ。なお、ビジネス向けにも料金が設定されているが、平日を中心にビジネス需要が結構あるらしい。個人の需要は週末に多いようで、平日はビジネス用途の需要になっている分が休日は個人用途の需要になり、上手くバランスするようだ。

我が近所ではどこにステーションあるのかと調べてみたら、徒歩7分ほどの所にある大きなショッピングモールの地下駐車場の一角に止まっている車があるそうだ。ウィーン市内全体で47箇所にあるらしい。まだまだ数は多くないとはいえ、駅などに重点的に置いてあるから、それなりに使いやすそうだ。時々走っているのを見かけることもある。(一昨日の夜9時頃に見かけた例では、パパが子供2人を載せて運転していた。)

日本でもオリックスなどが始めたらしいが、まだなじみのない制度だろう。こちらでも定着した制度だという感じはあまりない。しかし、面白いので、今後も注視しておこうと思う。

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