ロイター通信の英文版が、きわめてまっとうと思われるシナリオを掲載していた(元の記事;英語)。日本語のニュースにはまずでていない情報だ。足下のJALの話しですら、英語で記事を書くメディアの方が詳しく書いている始末である。日本語のニュースをいくら読んでも、世界がどう動いているかなんてさっぱり見えてこない、いい例だろう。
その記事によると、運命はすでに産業再生機構の手に握られており、いくつかのシナリオに別れる。
一つは、国際線を分離して全日空と事業統合するシナリオ。JALは地域内のローカル航空会社として生き残るというものだ。産業再生機構の富山和彦氏らが検討しているとされる。ANAの反対が予想される、と書いてあるが、そりゃそうだろうな。
次に出ているのは、外国の航空会社との連合を組むこと。前政権はこのアイディアを歓迎していたが、現政権は態度を明らかにしていないとしている。前出の富山氏は、ワンワールド陣営との連携を希望しているようだ。同氏の考えは、デルタとの提携は、デルタ自身が破綻手続きの途上にある以上理屈が通らないのではないか、とのこと。
最後に出ているのは、破産手続き。専門家の意見として、JALが効果的に再生するには裁判所で手続きを進めるしかない、と紹介している。三菱UFJ証券の姫野アナリストの意見としても、破産は投資家にとっては最悪のシナリオだが、レガシー・コストを労働組合の賛同なしに削れるという点では、破産手続きはJAL再生には悪い方法ではない、としている。
ロイター通信のレベルでは、ANAによる国際線の救済合併、外国航空会社との連合、破産の3つしか議論になっていない訳だ。書き方を見ると、破産が最も現実的との書き方にも読み取れる。ちなみに、TheStreet.comという別のメディアの記事では、JALはGM状態とされている。
だから、保険会社がJALの航空券を含んだ旅行保険を引き受けない、だとか、クレジットカード会社がJALの航空券の決済をしない、だのは、きわめて真っ当な対応とも言える。みんなこの件には敏感だ。オーストリアの高級紙DerStandardだって、一通り報じているほど、高い関心をもたれている事柄なのだ。
うーん、日本でも日経新聞くらいになればちゃんと報じていますがね。
ANAとの合併案…日経ビジネスが「国交省シナリオはJANA?」と報じている
海外との連合…デルタや、AA/BAとの連合案は既に報じられたとおり
破産…日経新聞では「GMのように新旧分離方式も考えられる」と報じている
優良じゃない部分は
(※新旧分離方式、という軟らかい表現を使っているところはアレかもしれんが)
ロイターが独自の分析力を持っているとは思えず。
まあ、パンピー向けメディアがまともに報じていないというのは仰るとおり。
民主党と官僚の闘いというイメージで煽っておりますからなぁ…
JALよりも大きな問題、亀井大臣というガンがブチ挙げた徳政令問題がありますので…
===
本文の順番は、
1.優良資産とそれ以外の分離方式
2.国際線のオペレーションをライバルと合併
3.海外の航空会社との提携
ですね。
SPLITTING UP “GOOD” AND “BAD” PARTSを破産方式と言うのには難あり…
GM意外でも比較的使われる方法と聞いております(といいつつすぐに事例が出てきませんが)
(レガシーコストが積み上がっていてそれを削るのはこの方式しかない、GMと同じ、というのはその通り)
あれ、「優良事業と不良事業の分離(優良資産とそれ以外の分離方式)」について言及した行が消えていました。(失礼しました。)
ロイターの記事には4つのシナリオが書いてあって、
1.優良事業と不良事業の分離
2.国際線事業をライバルと合併
3.海外の航空会社との提携
4.破産
ですね。(従って「SPLITTING UP “GOOD” AND “BAD” PARTS」は「破産方式」とは別です。)
====
1. はカネボウ方式とされているものの、三菱UFJ証券の姫野氏に言わせれば「同じ機材・労働力をネットワーク全体で使うので、分離は不可能。」と書かれていますね。
まあ、仰るとおり別にどれも目新しいものではないのですが、こういう冷静に整理した記事が出ていることが興味深いんじゃないかと思います(ロイター・ジャパンでも似たような記事は出ていますが、ここまではっきりとは整理はされていない。http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-11723920090930 )。
外国で発行される記事を読むと、日本国外からどう見えているかがよくわかって、大局が見えやすくなったりするなあと。
====
今回のは、経済系の話しなので、日経なりロイターでもずいぶん入ってきますが、それ以外の分野となると、ドイツのDie Zeitとかに相当する、いわゆる「高級紙」ってのが日本語にも欲しいなあ、とか思います。